日本初の海洋生分解性プラスチックレジ袋完成!製造企業のキラックスが背景を解説

2021/04/27
環境製品
#商品開発部#SDGs#環境にやさしい#生分解性プラスチック

2021年4月、日本初となる海洋生分解性プラスチックレジ袋が、大分県中津市のスーパーに導入されました
さらに、大分県中津市のNPO法人中津まちづくり協議会によって、会員事業所、市内の小中学校の児童・生徒への無料配布が実施されました。

海洋生分解性プラスチックについて、耳にしたことはあるものの実際にはどういったものか分からない、という方も多いのではないでしょうか。

この記事では、日本初となる海洋生分解性プラスチックレジ袋の製造企業である株式会社キラックスが、海洋生分解性プラスチック導入の背景と、海洋生分解性プラスチックレジ袋の概要をお伝えしています。

この記事をご一読いただければ、海洋生分解性プラスチックレジ袋についてご理解いただけることでしょう。

2023年8月31日追記
名古屋港水族館と協力し、公開実験を行いました。詳細は下記動画または下記記事にて。



実験公開中!海洋生分解性プラスチック製レジ袋~キラックス×名古屋港水族館~

1. 海洋生分解性プラスチック導入の背景

1-1. 海洋生分解性プラスチックとは何か

そもそも「生分解」とは、“バクテリアや菌などの微生物が分解することができるもの”という意味を持っています。

1989年、生分解性プラスチック研究会は、生分解性プラスチックを「自然界において微生物が関与して、環境に悪影響を与えない低分子化合物に分解されるプラスチックである」と定義しました。さらに、1993年のアナポリスサミットでは、「生分解性材料とは、微生物によって完全に消費され自然的副産物(炭酸ガス、メタン、水、バイオマスなど)のみを生じるもの」と再定義されています。

つまり、生分解性プラスチックとは“微生物によって分解され自然に還るプラスチック”のことを表しているのです。

さらに海の中にいる微生物によって分解できるプラスチックのことを、「海洋生分解性プラスチック」と呼びます。海洋中に流れ出たとしても、微生物によって分解され、形が消滅し自然に還ることができるのです。

1-2. 海洋生分解性プラスチック導入の背景1【SDGs】

2015年9月、国連サミットによって、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)を含む「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。
SDGsには、世界共通の目標として、健康、教育、経済成長、気候変動などに関する17の持続可能な開発目標と169のターゲットが設定されています。

17の目標のうち、海洋生分解性プラスチック導入に関わる目標は、下記の3点です。

  • 目標12. つくる責任 つかう責任
     ⇒廃棄物を減らし、持続可能な方法で生産し、消費する形態を確保すること
  • 目標13. 気候変動に具体的な対策を
     ⇒地球温暖化や気候変動への影響を考慮し、環境にやさしい対策を
  • 目標14. 海の豊かさを守ろう
     ⇒海や海の資源を守り、持続可能な形で利用すること

特に、プラスチックごみの海洋流出が地球規模の問題として大きく取り上げられています。2010年の推計によると、世界全体で約800万トンを超えるプラスチックごみが海洋へ流出しており、このままでは2050年までに海洋中のプラスチックが魚の重量を超過すると予測されています。
私たち人間が排出した海洋プラスチックごみによって、海の生き物に大きな被害を与えているのです。

そこで、海洋へ流出してもごみとならない「海洋生分解性プラスチック」に注目が集まるようになったのです。

1-3. 海洋生分解性プラスチック導入の背景2【レジ袋有料化】

2019年5月、政府によって「プラスチック資源循環戦略」が策定され、プラスチックの使い捨て使用について見直しが求められる動きが高まります。「3R+Renewable」という基本原則が発表され、ごみの発生を減らす、繰り返し使う、資源として再利用する、再生可能な資源に替えるといった目標が掲げられました。

具体的には、「2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%排出抑制」という目標を達成するための施策として、2020年7月よりレジ袋有料化義務化がスタートしました。

レジ袋有料化は、買い物を行った者がレジ袋を購入するという仕組みですが、有料化の対象外となるものがあり、その1つが海洋生分解性プラスチック100%のレジ袋なのです
海洋生分解性プラスチックは、微生物によって海洋で分解されるため、海洋プラスチックごみ問題対策に寄与するという理由で対象外となったのです。

2. 日本初の海洋生分解性プラスチックレジ袋の開発から製品化まで

2-1. 製造企業キラックスの海洋生分解性プラスチックレジ袋開発経緯

キラックスでは、15年以上に渡って生分解性プラスチックの研究をしてきましたが、そのきっかけとなったのが2005年開催の愛・地球博です。愛・地球博でのゴミ袋採用を目指して、2004年以降キラックス商品開発部で生分解性プラスチック製品の開発が本格化しました。試行錯誤を繰り返し、キラックスの生分解性プラスチックゴミ袋は、見事に愛・地球博に採用され、生分解性プラスチック製品の開発企業として実績を残しました。この出来事が、今後の商品開発を進める上での大きな一歩となりました。

当時から海洋生分解性プラスチックの必要性は話題にのぼってはいましたが、海外企業を含め、実用化することはありませんでした。
それが近年のプラスチックによる環境汚染問題により、海外だけでなく日本国内での海洋生分解性プラスチックのニーズが高まってきました。

キラックスでは、生分解性プラスチック製ゴミ袋やレジ袋の開発企業としての経験や実績から、2018年頃より本格的に海洋生分解性プラスチックレジ袋の開発に着手します。三菱ケミカル株式会社協力のもと、海洋生分解性プラスチックレジ袋の製品化に向け、約3年間に渡って研究開発を続けてきたのです。

2-2. 日本初の海洋生分解性プラスチックレジ袋はどんなもの?

寄贈式の様子(左:NPO法人中津まちづくり協議会 仲理事長 右:大分県中津市 奥塚市長)

2021年4月、大分県中津市のスーパーに日本初となる海洋生分解性プラスチックレジ袋が採用されました。
レジ袋のサイズは0.03×260/400×500㎜、NPO法人中津まちづくり協議会によってデザインされたオリジナル商品です。

原料にはトウモロコシなど植物由来のものを使用しており、素材はBioPBS™(バイオPBS)を使用した海洋生分解性樹脂からできています。

三菱ケミカル株式会社の開発素材であるPBS(ポリブチレンサクシネート)は、自然界の土中の微生物の力で水と二酸化炭素に自然に分解される生分解性プラスチックであり、一般的な生分解性樹脂の中では高い耐熱性を持ち、繊維などとの相溶性も高いという特徴を有しています。

このBioPBS™を使用したフィルムを使って、今回の海洋生分解性プラスチックレジ袋を製造しています。このフィルムは、海洋生分解性の試験において1年間で約90%分解されたとの評価を得ています。(国際基準ISOに準拠した試験を第三者機関にて実施)

日本初となる海洋生分解性プラスチックレジ袋を採用した、NPO法人中津まちづくり協議会では、「地球上の全ての人やモノを愛し、大切にし、生かしきっていこう!」というコンセプトを掲げ、持続可能な経済発展のための活動を行っています。

学校やご家庭で海洋プラスチックごみ問題をはじめとする環境保全に対する意識を高めてもらおうと、海洋生分解性プラスチックレジ袋を会員事業所、市内の小中学校の児童・生徒へ配布しました。さらに日常的に利用するスーパーに取り扱ってもらうことで、大分県中津市から海洋生分解性プラスチックレジ袋を全国へ波及させていこうと今回の採用に至りました。
https://www.kiracs.co.jp/blog/3898/

3. まとめ

海洋生分解性プラスチック導入の背景や、日本初の海洋生分解性プラスチックレジ袋についてご理解いただけたでしょうか。
キラックスでは、生分解性プラスチック製品の開発企業として、海洋生分解性プラスチックレジ袋が今後さらに普及し、環境保全に役立つアイテムとなる手助けを行っています。

生分解性プラスチックや海洋生分解性プラスチックを使った商品開発にご興味がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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